2010年12月05日
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北東アジア地域協力における領域別・重要分野別の連携強化の推進
2010年11月27日金沢における「環日本海協力・共生・持続的可能な発展国際会議」での発言要旨
北東アジア地域協力における領域別・重要分野別の連携強化の推進
――6つの領域と5つの重要分野での連携強化
黒龍江省社会科学院北東アジア研究所研究員 だ志剛
20世紀80年代において日中の研究者が北東アジア地域概念を提唱して以来、30年余りが立つ。北東アジアという地理的な概念、国家観念、外交意識が混じりあっているこの地域は、そのエリアを広義に捉えるか狭義に捉えるかは定まっていないが、世界的な影響力を持つ国と閉鎖的な小国が並存する中での地域の発展と変化が再び世界的な注目を浴びつつある。
2008年の米国発のリーマンショックによって拡大された世界的金融危機は、蔓延の時間の長さ、波及範囲の広さ、破壊力の大きさにおいて前代未聞、百年に一度と言われる。危機が先進国、新興国及び途上国にそれぞれショックをもたらしたが、そのことが逆に北東アジア地域の活力と潜在力の高さを示すことになった。特に、ポスト金融危機の時期に入って、欧米及び日本の回復の相対遅れや国際的政治影響力の低下が目立つ中で、北東アジア地域全体の影響力が日増しに高まり、多国間の協調関係の強化や、低炭素・環境保全に関する協力も加速している。そのなかで、中国の率先的な回復の早さが目立っている。これらの動きは北東アジア地域の二国間協力の強化に重要なプラットフォームを提供するだけではなく、地域内の多国間協力、特に将来の持続可能な発展に新たな要因と活力をもたらしている。このGDP世界上位15位にランクインした中日ロ韓など重要な国々を含む北東アジア地域協力が資源エネルギー、省エネ・環境保全など多国間協力の先進的なモデル地域となり、今後の30年における世界経済の牽引役になる可能性が高まっている。
今回の危機が、「危機」を齎したと同時に、「機」(機会)をも生みだし、地域協力への教訓を与えるとともに、これまで例のない機会を提供している。つまり、域内における国々の心理的な距離を縮め、地域協力によって危機から脱却し、共通の回復を図り、ウィン・ウィンという相互利益関係を構築することが時代の潮流となっているのである。
一方、国際政治・外交・経済において新たな変化が生まれ、北東アジア地域協力は重大なチャレンジに直面している。域内の領土問題を巡って、対立と緊張が再燃し、東アジア共同体概念が弱体化し、環太平洋パートーナーシップ協定(TPP)の推進がみられるなど、域内で協力のシステムとその基盤が揺らぐならば、より広範囲な協力関係の中に北東アジア地域協力が同化・吸収されるというリスクにも直面している。北東アジア地域協力を一日も早く安定的なものにし、地域としての地位向上と制度的な協調をはかるものに昇華させる必要がある。地域の連帯強化を醸成させるためには、域内における国々が努力しあい、以下の6つの領域および5つの重要分野での連携強化を実現させなければならない。
1.6つの領域での連携強化
(1)隣接する成熟した経済共同体との連携
長期・中期・短期という三つのレベルにおいて、北東アジアの地域協力は隣接する経済共同体との連携を念頭において進めなければならない。長期的目標から見れば、北東アジア地域協力はEUと北米自由貿易区という成熟した経験を踏まえて、その高度に制度的な統一の成果を吸収する必要がある。中期的には、北東アジア地域協力は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)と連動し、その多国間の協調機能を吸収する必要がある。短期的には、北東アジア地域協力がアセアン10+3との連動して、その開放的かつ独立的方策を吸収する必要がある。
(2)北東アジア国家間戦略の連携
北東アジア域内の各国がそれぞれの中央・地方レベルと各分野における国家戦略を打ち出し、それら戦略の独自の推進と二国間相互依存関係を積み重ね、最終的には多国間相互依存関係への連動へと移行させなければならない。これにより、北東アジア地域協力が国と国の間の密接度を強化し、域内の内需と外需の相互依存関係を形成し、国家と地方レベルの発展戦略において小異を残しつつ大同に着き、国家間戦略が北東アジア地域戦略へと転換させることが可能となる。
(3)北東アジア地域における地方自治体間戦略の連携
東北振興戦略(中国)、極東地域開発戦略(ロシア)など北東アジア地域における地方政府が主導する戦略間の連携が、国境地域を中心として展開する北東アジア地域協力に全方位性、重層性、多分野の発展性を与えるために極めて重要である。地方間の国際交流を強化することが、同時に政治的な干渉を弱化させ、ひいては各国家内の地域均衡的発展と地域格差の縮小にも寄与するのである。
(4)北東アジア地域における内需循環との連携
北東アジア地域協力は、北東アジア経済圏の理念を醸成しており、「大北東アジア経済圏」の内需循環の形成は日程に上っている。北東アジア経済圏を基礎とする内向(地域内動力)的な相互発展も可能となる。域内の内需を動力とする北東アジア地域経済の繁栄とその持続的な発展は、世界的な地域協力への融合に不可欠な要素の一つである。
(5)域内における国境都市と中央都市間の連携
北東アジア地域協力の拠点となっている国境都市と中央都市との関係が行政間の連携の制約や縦割り行政、相互不理解などによって疎遠となっている現状を打開しなければならない。それに代えて、独自の発展をベースとした相互バックアップ、国際連動への努力が必要である。国境都市(税関或いは輸送回廊の町)と中央都市を連動をさせ、税関を接点として、中央都市と国境都市との域内連携を強化させる必要がある。
(6)域内にある各種国際会議間の連携
北東アジア地域協力を推進する主体として、問題提起、意識喚起、意見交換、議論の場として政府・シンクタンク・民間団体などにより開催される各種の国際会議がある(日本の新潟、中国の長春・ハルピン、ロシアのウラジオストクなど)。これらの会議の構成員である政府系機関、企業家団体および研究者による有益な提言や産官学の具体的取り組みを相互に連携させ、中央政府と地方自治体に対する具体的提言を行い、実務レベルにおいて実行可能な実践を促進させる必要がある。
2.5つの重要分野での連携強化
(1)観光分野での国境を跨る連携強化
近年、北東アジア地域における観光が日増しに活気と活力を見せており、域内各国において最も重視される分野となっている。こうした北東アジア地域における多国間の国境を跨る観光が人・もの・情報の大移動と交流の時代をもたらし、北東アジア地域協力を深化させるための新たな突破口となるのである。
(2)物流分野での水・陸・空のパイプの連携強化
北東アジア地域における各分野での協力の中で、国際物流協力が観光に次ぎ、多国間協力体制の構築での最も有力視される分野である。北東アジア地域における物流構築の全面的な実験と試行により、物流分野での水・陸・空での太いパイプの存在は域内における多国間協力のさらなる進展を実現させるもう一つの突破口である。
(3)資源分野での供給国と消費国との連携強化
北東アジア地域は世界中でも数少ない資源の豊かな地域である。資源の豊かなロシア・朝鮮・モンゴルと消費国である中国・日本・韓国の間に、平等、互恵及び信頼できるビジネス関係を構築する必要があり、資源の供給国と消費国間の協調システムが将来の北東アジア地域全体の競争力、地域内でのウィンウィン関係構築に極めて重要である。
(4)域内での相互投資に関する連携強化
北東アジア地域の一体感と連帯感を増強させる鍵の一つが相互投資であり、協力関係を緊密にする新たな突破口でもある。特に地域内での経済貿易成長を直接牽引できる輸出入基地の建設、インフラ整備、交通・物流分野と民生需要など、国境地帯の税関と中央都市間を結ぶ輸送回廊の建設を急ぐ必要がある。
(5)省エネ・環境保全分野における連携強化
世界のなかでも優れた省エネ・環境保全技術を持ち、また率先して低炭素社会の構築とグリーン成長戦略を打ち出した日韓、環境問題を日増しに重視する姿勢を見せる中国にとっては、省エネ・環境保全分野で北東アジア地域での二国間・多国間の協力を深化させることは自国の長期利益に適合している。該当地域を省エネ・環境保全モデル地域として世界に発信する突破口にすべきである。
北東アジア地域協力における領域別・重要分野別の連携強化の推進
――6つの領域と5つの重要分野での連携強化
黒龍江省社会科学院北東アジア研究所研究員 だ志剛
20世紀80年代において日中の研究者が北東アジア地域概念を提唱して以来、30年余りが立つ。北東アジアという地理的な概念、国家観念、外交意識が混じりあっているこの地域は、そのエリアを広義に捉えるか狭義に捉えるかは定まっていないが、世界的な影響力を持つ国と閉鎖的な小国が並存する中での地域の発展と変化が再び世界的な注目を浴びつつある。
2008年の米国発のリーマンショックによって拡大された世界的金融危機は、蔓延の時間の長さ、波及範囲の広さ、破壊力の大きさにおいて前代未聞、百年に一度と言われる。危機が先進国、新興国及び途上国にそれぞれショックをもたらしたが、そのことが逆に北東アジア地域の活力と潜在力の高さを示すことになった。特に、ポスト金融危機の時期に入って、欧米及び日本の回復の相対遅れや国際的政治影響力の低下が目立つ中で、北東アジア地域全体の影響力が日増しに高まり、多国間の協調関係の強化や、低炭素・環境保全に関する協力も加速している。そのなかで、中国の率先的な回復の早さが目立っている。これらの動きは北東アジア地域の二国間協力の強化に重要なプラットフォームを提供するだけではなく、地域内の多国間協力、特に将来の持続可能な発展に新たな要因と活力をもたらしている。このGDP世界上位15位にランクインした中日ロ韓など重要な国々を含む北東アジア地域協力が資源エネルギー、省エネ・環境保全など多国間協力の先進的なモデル地域となり、今後の30年における世界経済の牽引役になる可能性が高まっている。
今回の危機が、「危機」を齎したと同時に、「機」(機会)をも生みだし、地域協力への教訓を与えるとともに、これまで例のない機会を提供している。つまり、域内における国々の心理的な距離を縮め、地域協力によって危機から脱却し、共通の回復を図り、ウィン・ウィンという相互利益関係を構築することが時代の潮流となっているのである。
一方、国際政治・外交・経済において新たな変化が生まれ、北東アジア地域協力は重大なチャレンジに直面している。域内の領土問題を巡って、対立と緊張が再燃し、東アジア共同体概念が弱体化し、環太平洋パートーナーシップ協定(TPP)の推進がみられるなど、域内で協力のシステムとその基盤が揺らぐならば、より広範囲な協力関係の中に北東アジア地域協力が同化・吸収されるというリスクにも直面している。北東アジア地域協力を一日も早く安定的なものにし、地域としての地位向上と制度的な協調をはかるものに昇華させる必要がある。地域の連帯強化を醸成させるためには、域内における国々が努力しあい、以下の6つの領域および5つの重要分野での連携強化を実現させなければならない。
1.6つの領域での連携強化
(1)隣接する成熟した経済共同体との連携
長期・中期・短期という三つのレベルにおいて、北東アジアの地域協力は隣接する経済共同体との連携を念頭において進めなければならない。長期的目標から見れば、北東アジア地域協力はEUと北米自由貿易区という成熟した経験を踏まえて、その高度に制度的な統一の成果を吸収する必要がある。中期的には、北東アジア地域協力は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)と連動し、その多国間の協調機能を吸収する必要がある。短期的には、北東アジア地域協力がアセアン10+3との連動して、その開放的かつ独立的方策を吸収する必要がある。
(2)北東アジア国家間戦略の連携
北東アジア域内の各国がそれぞれの中央・地方レベルと各分野における国家戦略を打ち出し、それら戦略の独自の推進と二国間相互依存関係を積み重ね、最終的には多国間相互依存関係への連動へと移行させなければならない。これにより、北東アジア地域協力が国と国の間の密接度を強化し、域内の内需と外需の相互依存関係を形成し、国家と地方レベルの発展戦略において小異を残しつつ大同に着き、国家間戦略が北東アジア地域戦略へと転換させることが可能となる。
(3)北東アジア地域における地方自治体間戦略の連携
東北振興戦略(中国)、極東地域開発戦略(ロシア)など北東アジア地域における地方政府が主導する戦略間の連携が、国境地域を中心として展開する北東アジア地域協力に全方位性、重層性、多分野の発展性を与えるために極めて重要である。地方間の国際交流を強化することが、同時に政治的な干渉を弱化させ、ひいては各国家内の地域均衡的発展と地域格差の縮小にも寄与するのである。
(4)北東アジア地域における内需循環との連携
北東アジア地域協力は、北東アジア経済圏の理念を醸成しており、「大北東アジア経済圏」の内需循環の形成は日程に上っている。北東アジア経済圏を基礎とする内向(地域内動力)的な相互発展も可能となる。域内の内需を動力とする北東アジア地域経済の繁栄とその持続的な発展は、世界的な地域協力への融合に不可欠な要素の一つである。
(5)域内における国境都市と中央都市間の連携
北東アジア地域協力の拠点となっている国境都市と中央都市との関係が行政間の連携の制約や縦割り行政、相互不理解などによって疎遠となっている現状を打開しなければならない。それに代えて、独自の発展をベースとした相互バックアップ、国際連動への努力が必要である。国境都市(税関或いは輸送回廊の町)と中央都市を連動をさせ、税関を接点として、中央都市と国境都市との域内連携を強化させる必要がある。
(6)域内にある各種国際会議間の連携
北東アジア地域協力を推進する主体として、問題提起、意識喚起、意見交換、議論の場として政府・シンクタンク・民間団体などにより開催される各種の国際会議がある(日本の新潟、中国の長春・ハルピン、ロシアのウラジオストクなど)。これらの会議の構成員である政府系機関、企業家団体および研究者による有益な提言や産官学の具体的取り組みを相互に連携させ、中央政府と地方自治体に対する具体的提言を行い、実務レベルにおいて実行可能な実践を促進させる必要がある。
2.5つの重要分野での連携強化
(1)観光分野での国境を跨る連携強化
近年、北東アジア地域における観光が日増しに活気と活力を見せており、域内各国において最も重視される分野となっている。こうした北東アジア地域における多国間の国境を跨る観光が人・もの・情報の大移動と交流の時代をもたらし、北東アジア地域協力を深化させるための新たな突破口となるのである。
(2)物流分野での水・陸・空のパイプの連携強化
北東アジア地域における各分野での協力の中で、国際物流協力が観光に次ぎ、多国間協力体制の構築での最も有力視される分野である。北東アジア地域における物流構築の全面的な実験と試行により、物流分野での水・陸・空での太いパイプの存在は域内における多国間協力のさらなる進展を実現させるもう一つの突破口である。
(3)資源分野での供給国と消費国との連携強化
北東アジア地域は世界中でも数少ない資源の豊かな地域である。資源の豊かなロシア・朝鮮・モンゴルと消費国である中国・日本・韓国の間に、平等、互恵及び信頼できるビジネス関係を構築する必要があり、資源の供給国と消費国間の協調システムが将来の北東アジア地域全体の競争力、地域内でのウィンウィン関係構築に極めて重要である。
(4)域内での相互投資に関する連携強化
北東アジア地域の一体感と連帯感を増強させる鍵の一つが相互投資であり、協力関係を緊密にする新たな突破口でもある。特に地域内での経済貿易成長を直接牽引できる輸出入基地の建設、インフラ整備、交通・物流分野と民生需要など、国境地帯の税関と中央都市間を結ぶ輸送回廊の建設を急ぐ必要がある。
(5)省エネ・環境保全分野における連携強化
世界のなかでも優れた省エネ・環境保全技術を持ち、また率先して低炭素社会の構築とグリーン成長戦略を打ち出した日韓、環境問題を日増しに重視する姿勢を見せる中国にとっては、省エネ・環境保全分野で北東アジア地域での二国間・多国間の協力を深化させることは自国の長期利益に適合している。該当地域を省エネ・環境保全モデル地域として世界に発信する突破口にすべきである。